寡黙な御曹司は密かに溺愛している
終業後、信号を渡った会社の向かいにあるチェーン店のカフェで軽くお茶をしながら一人、課長が戻ってくるのを待つことにした。

カウンター席の窓からは、うちの会社に出入りする人たちがはっきりと見える。

ここで何の連絡もせずに待つなんて、若干ストーカーっぽい気もしなくはないけれど、それはもう言いっこなし。

懐かしいな。
学生時代の淡い片思いを思い出す。

ちょっと姿を見られたらいいなって好きな人のクラスの前を横切ったりしてた。

会えたらそれだけで嬉しい。
会えなかったらちょっと切ない。

その気持ちと一緒。

まさかこの歳であの気持ちをもう一度、感じることができるなんて思いもみなかったけれど。

カフェに入り、課長を待つこと一時間。
流石にもうコーヒー一杯で長居するには時間も持て余してきた。
それにお腹も空いてきたし。

七時になったら帰ろう。

後、三十分だけ待つと言い聞かせて、追加でカフェオレとサンドウィッチを頼んだ。
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