寡黙な御曹司は密かに溺愛している
はぁ、どうしよう。もうぐちゃぐちゃだ。

何なの、本命がいるなら「気になる」なんて言わないでよ。
一緒にご飯食べに行ったり、デートなんてしないでよ。

私はもう涙が止まらないくらい、課長のことを好きになってしまったのに。


忘れよう、無理をしてでも。
ちょうどいいじゃない。お見合い相手の人を好きになれるかもしれない。
課長なんて、課長なんて、もう……。




辛い気持ちをかき消すように戻ってきた自宅。

あれから何度も携帯は鳴っていたけれど見ないふりをした。

今、課長からの電話なんて出たくない。
それでも掛けなくてはいけない人がいるから携帯を手に取った。


「……着信、十件って」


その十件全ては課長から。
メールも来ていたけれど目を通さない。


そして、私は着信履歴からおじいさんに電話を掛け、一言だけ告げた。




「……お見合い、受けさせていただきます」


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