王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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チャンドラーがエマの薬屋を訪れたのは、それから二日後だ。
「急だが、今日でこの店の営業を辞めてもらう」
「え?」
突然の通達に、エマは目をぱちくりとさせた。
「どうしてですか? あんなに通ってくださるお客様がいるのに」
「王太子様はシャーリーンお嬢様を選ばれた。もう舞踏会は開かれない。よって、使用人たちの忙しさも軽減され、普段通りの仕事量に戻る。薬屋はもう必要ない。城下町の店に戻るといい」
「それは、……もう決定なのですか」
「キンバリー伯爵様がそう決められたし、国王様も医師がいるのだから薬室は必要ないとの仰せだ。もともとこの部屋は国王様より伯爵様が仮受けていた部屋だ。君に拒否権はない。後程荷物を運ぶ従僕を二人ほどよこすから、午前中のうちに荷物をまとめるように」
「あ、まっ……」
チャンドラーは言いたいことだけ言うと、扉を閉めて出ていった。エマにとってはすべてが青天の霹靂だ。
「……婚約が決まったって」
ギルバートの正体が発覚し、がエマに恋心を訴えてきた日から、まだ一週間ほどしか経っていない。
そんなに急に心変わりをしたというなら、シャーリーンが惚れ薬を使ったと考えるのが妥当だろう。
「どうしよう」
それは興味本位で作ってしまった自分のせいでもある。
惚れ薬は精神に影響を及ぼす薬だ。一度ならばいいが、多用すれば体にも被害が出ることもある。
「ギルに伝えなきゃ」