王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
6.婚約発表での悲劇
国王は上機嫌だった。
なにせ、あれだけ結婚を渋っていたギルバートが、ついにその気になってくれたのだ。
「父上、俺はシャーリーン嬢を妻にしようと思います」
先日の悲観的な様子からの急な心変わりに驚きはしたが、事態は国王の望むとおりに進んでいる。
シャーリーンは気が強いが、その美しさは国中の貴族が知っている。何より健康で若い。彼女ならばギルバートとの子をたくさん産んでくれるだろうし、実家であるキンバリー伯爵家は金持ちだ。彼からの支援も期待できる。
「そうか。ではさっそく婚約発表を行おう。式はいつがいいだろうな。王太子の結婚ともなれば、海を渡った隣国へも招待状を出さねばなるまい。半年後でも間に合うかどうか」
「いつでも構いませんよ。まあ、早いほうがいいですけどね。今日もシャーリーンと会う約束なのです。相談してみますよ」
「おお、おお。随分仲睦まじくなったのだな。何ならシャーリーン殿に部屋を与えてはどうだ。毎日城下町から通ってくるのでは大変だろう。それに婚礼用のドレスも仕立てなければ」
「そうですね。そこは女性同士のほうがいいでしょう。母上にお願いしてみます」
ギルバートが執心していたという薬屋の娘を追い出したのも、良かったかもしれない。渦中の娘がいなくなり、ギルバートはようやく王子としての自分を取り戻したのだろう。
前向きに結婚への話を進めるギルバートに、国王は満足していた。