王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
*
セオドアが帰った後、エマは店番をジュリアに任せ、母親のベティが薬を作っている工房へと入った。
「母さん、実はあの、魔法薬のレシピのことなんだけど」
「うん? なあに」
「あそこに、惚れ薬の作り方が書いてあったでしょ。アレって……」
「ああ、惚れ薬ね。アレって私のオリジナルレシピなのよねー」
「えっ」
ベティは禁じられている薬という意識がないのか、あっけらかんとしている。
「え、大丈夫なの? それ」
「エマ、まさか作ったの?」
「え、あの、……その」
「やだー、年頃だものね。好きな子でもできたの?」
逆に問いかけられ、まごまごと言い濁していると、ベティはカラカラと笑った。流石自分でそんなレシピを考えるだけあって、ベティには咎める様子もない。
「まあ、座りなさいよ」
自分の隣の椅子を引き、エマを座らせる。そして、母親らしい優しい顔で笑った。
「戻って来てからなんとなく元気がないものね。お城で好きな人でもできたんじゃないかと思っていたのよ。あの惚れ薬は、暗示の魔法効果があるの。暗示って知ってる?」
エマは首を振る。
「クラリス様が得意な魔法なんだけどね。かかった人間は嘘の記憶を植え付けられるわけ。惚れ薬の場合は、目の前の人とかつて好きだった人を結びつけるの。だから今までに恋をしたことがない人には効かないし、薬が効いている間は、記憶があやふやになってぼうっとする。その間に、相手の心を自分のものにできるかは本人次第ってわけ」
「……そうよね。薬って、永遠に効くわけじゃないもんね」
セオドアが帰った後、エマは店番をジュリアに任せ、母親のベティが薬を作っている工房へと入った。
「母さん、実はあの、魔法薬のレシピのことなんだけど」
「うん? なあに」
「あそこに、惚れ薬の作り方が書いてあったでしょ。アレって……」
「ああ、惚れ薬ね。アレって私のオリジナルレシピなのよねー」
「えっ」
ベティは禁じられている薬という意識がないのか、あっけらかんとしている。
「え、大丈夫なの? それ」
「エマ、まさか作ったの?」
「え、あの、……その」
「やだー、年頃だものね。好きな子でもできたの?」
逆に問いかけられ、まごまごと言い濁していると、ベティはカラカラと笑った。流石自分でそんなレシピを考えるだけあって、ベティには咎める様子もない。
「まあ、座りなさいよ」
自分の隣の椅子を引き、エマを座らせる。そして、母親らしい優しい顔で笑った。
「戻って来てからなんとなく元気がないものね。お城で好きな人でもできたんじゃないかと思っていたのよ。あの惚れ薬は、暗示の魔法効果があるの。暗示って知ってる?」
エマは首を振る。
「クラリス様が得意な魔法なんだけどね。かかった人間は嘘の記憶を植え付けられるわけ。惚れ薬の場合は、目の前の人とかつて好きだった人を結びつけるの。だから今までに恋をしたことがない人には効かないし、薬が効いている間は、記憶があやふやになってぼうっとする。その間に、相手の心を自分のものにできるかは本人次第ってわけ」
「……そうよね。薬って、永遠に効くわけじゃないもんね」