王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~



「つまり、……キンバリー伯爵のお嬢さんが惚れ薬を使って王太子を虜にしようとしているのね」

「……私があんな薬作ったからよ」


エマが祈るように手を合わせながら絞り出した悔恨を、ベティはあっけらかんと否定した。


「それを言ったら、そんなレシピを考えた私のせいになっちゃうじゃないのよ。……いい? エマ。あなたが自分を責める気持ちは分かるけど、あなたは薬を作っただけ。使ったのはキンバリー伯爵のお嬢さんでしょう。どんな条件が転がっていたとしても、使う、使わないを決めるのは当人よ。魔女も人も関係ないの。今回の件で悪いのは、実際に薬を使ってしまったキンバリー伯爵のお嬢さんよ」


ベティは断言する。
エマには乱暴な議論のようにも思えたが、母親は自信満々だ。それに少しだけ救われもした。


「そうかな。でも」

「でも、じゃないわ。そんなことで自分を責めているのは時間の無駄ってもんよ。それより、現状を確認しないといけないわ。まずは実際に使い続けているのかどうか。でも、キンバリー伯爵家に行っても、お嬢さんに会わせてはもらえないでしょうしね。……ここはまず、最悪の場合を考えましょう。続けて飲まされているとしたら、惚れ薬の効果を打ち消す薬を作らなくちゃ。そのためにはクラリス様に連絡を取らないと」

「母さんが考えたレシピでしょう? 母さんにつくれないの?」

「んー、私は魔法をかけるのは得意でも解くのは苦手だからなぁ。作るにも時間がかかると思う。クラリス様に聞いたほうが早いわよ」

< 123 / 220 >

この作品をシェア

pagetop