王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「当たり前じゃない。してもいいとか考えなくたってしちゃうでしょう? あんただって女の子なんだもの」
「そりゃそうだけど。……だって、魔女だって言っちゃいけないんでしょ?」
「心を通わせたのなら話は別よ。あなたが、秘密を守ってくれると信じた人になら明かしてもいいわ。あなたたちがそういう人と出会えるようにと思って、私たち、この首都に店を構えたのに」
「……そうだったんだ」
大人たちの年代にそんなやり取りがあったとは知らなかった。
エマの周りにいた夫婦はみんな魔女同士だったから、魔女は仲間内でしか家庭を築けないんだと思いこんでいたエマに、希望の光が灯る。
(なんだ、だったら……私だって)
そう思って、すぐに首を振る。
(……私は、無理か)
エマの恋しい相手は王太子なのだ。ただの庶民を好きになるのとは違う。例えギルバートが秘密を守ると言ってくれても、王家に魔女の血が入るのがいいことだとはエマには思えなかった。
「……で? エマは誰が好きなの?」
ベティが優しく問いかける。
先ほど説明したとき、自分の気持ちの部分だけは隠して話したのだ。
「内緒。……言えないような人」
「そう。でもね、好きな人が出来たなら、告白していいわよ」
「え?」