王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~

「仮に相手が秘密を守れないと言ったら、私が魔法で忘れさせるわよ。魔女だということを忘れさせる魔法なら、クラリス様も許してくださるわ」

「でも」

「魔女だから言えない。幸せになれない。――そう思うことは、私たちを外の世界に送り出してくれたドロシア様やデイモン様に失礼よ。魔女も普通の人間も一緒。ただ魔法という能力を使えるか使えないかだけの違い。……そうでしょ?」

「……母さん」


エマの瞳に涙が盛り上がる。


(でもね、母さん。私の好きな人は、王子様なんだよ。この国の舵をきる、大切な人なの。薬を作ることしか能のない魔女に、どうやって彼を助けることができる?)


それはさすがに言えなかった。
折角応援してくれている母を落胆させたくなかったし、エマ自身、言葉にだしてしまうのが悲しくて嫌だったのだ。


「と、とにかく、クラリス様に薬の効果を打ち消す方法を教えてもらわないと」

「僕の出番だね」


どこから話を聞いていたのか、バームがいつの間にか棚の上にとまっていて、ひらりとエマの肩に飛び移った。


「バーム」

「クラリス様に伝言だろ? ほら、早く言えってエマ。僕は君が笑顔になるためなら何でもするよ」

「ありがとう、バーム」


エマは惚れ薬の効果を打ち消すにはどうしたらいいかを尋ね、それを銀色の羽に託し、バームを送り出した。

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