王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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国王が急ぎ参集し催した夜会には、社交期ということもあり、首都近郊に滞在していた多くの貴族が参加した。
「よくぞ来てくれた皆の者。今日は民に報告する前に君たちに伝えることがある」
マクレガー侯爵は苦虫をかみつぶしたような顔ですでに酒をあおっており、キンバリー伯爵は自慢の髭を何度も撫でつけながら、そのときがくるのを今か今かと待っていた。
「ギルバートが妃を決めたのだ。みんなにも紹介しよう。キンバリー伯爵令嬢・シャーリーン殿だ」
従者が扉を開けると同時に、貴族服に身を包んだギルバートと赤のドレスを華々しく着こなしたシャーリーンが仲睦まじい様子で入ってきた。
「おめでとうございます」
人々はふたりを囲むように集まり、王太子自らの言葉を待った。
「みんなありがとう。俺はこれまでの舞踏会で、心から愛する人を見つけた」
笑顔を浮かべたまま高らかに宣言したが、ギルの視界は安定しない。ひとの顔がぼやけて見え、気を抜くと足元がふらつきそうだ。
「こちらにいるシャーリーン嬢、俺は彼女を妻にする」
「皆さまよろしくお願いいたします」
シャーリーンは百合の花のような華々しい笑顔でみんなに挨拶する。
「おめでとう。伯爵も安泰だな。となると次は世継ぎが楽しみだな。シャーリーン殿の子ならさぞや可愛いだろう」
「まあ、気が早いですわ……」
「おめでとう。お似合いだよ」
「まあ、ありがとうございます」
シャーリーンが次々と祝辞を述べてくる貴族に応対している間も、ギルバートはめまいを感じ続けていた。
そしてついに、体のバランスを崩して膝をついた。すぐさま、シャーリーンが悲鳴を上げる。