王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「全く。様子を見にと思って出てみれば、すでに解雇されたというじゃないの。惚れ薬を作ったせいなの?」
「うーんと、説明すると長くなるんですが……」
エマはふたりを中に引き入れ、シャーリーンから惚れ薬づくりを強制され、奪われた経緯を説明した。
「なるほど。で、そのシャーリーン様が、王太子様に薬を盛ったんじゃないかというのね?」
「はい」
「で、惚れ薬が多量に盛られたときの対処方法を知りたいと」
「はい。どうやったら薬の効果をなくすことができますか?」
「そうねぇ。まずは惚れ薬のレシピをみせて頂戴」
ベティがすぐさまレシピを持ってくる。クラリスは「へぇ、なるほど」などど途中感心しながらレシピを目で追う。
「これはほとんど暗示と一緒ね。だとすれば……そうね」
クラリスは店内を見回して、サービスで置いてあるのど飴を見つけた。それをひとつ取り出し、エマに手渡す。
「これ」
「これって。のど飴ですよ?」
「媒体物はなんでもいいのよ。ほんの少し魔力を込めてあげるの。心に作用する魔法を解くには、本人の精神力を高めてあげることが一番大事なのよ。今、彼の心には、嘘の衣がかぶされている。でも本当の心とは違う。その違和感が、本人の負担になるのよ。この手の薬で調子を崩す人は、心の奥に大切な人や想いを抱えているのよ」
エマの胸がドキリとなった。ギルバートの心には……あの告白が嘘でなければエマが住んでいるはずだった。