王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~

「私、ギルを助けたいの。彼が死んでしまうなんて嫌」


救う手立てがあるのならば、彼を救いたい。自分の力で、彼を取り戻したい。
エマの中で何かが吹っ切れた。


「あとで私はどうなってもかまいません。でも今だけ、ヴァレリア様にお願いして、侍女のふりをさせてもらえませんか?」

「ヴァレリアの?」

「ヴァレリア様なら、城の中にお部屋があるくらいだから、ギルの傍にも行けるんじゃないですか?」

「……それは、たしかに。しかし、マクレガー侯爵に知れたら」

「あとで罰はいくらでも受けます。でも、この飴では不完全だもの。私が、呼びかけないと」


全ての魔法に打ち勝つものが真実の愛だというのなら、エマはそれを持っている。
あの日、ギルの気持ちに応えることのないまま、抱え込んだ気持ち。それが、彼を救うための特効薬だ。


「バレたら、私が脅したって言ってください。あとで捕まってもかまわない。とにかく一度ギルに会わせて……!」

「エマ」


セオドアは、エマに真摯な態度に心を打たれた。


「……顔をあげて、エマ。ヴァレリアに頼んでみるよ。一緒に行こう」

「はい! ありがとうございます。セオドア様」

「気にするなよ。俺たちは友人だろう? 困っている友人に力を貸すのは当然のことだ」

「今すぐ準備します」


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