王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


「まあっ、エマさん。良かった……良かったわ! 急にいなくなるんですもの。私がどんなに心配したか」

「ヴァレリア様?」

「薬室のこと……力になれなくてごめんなさい」


まさか抱擁を受けるとは思わず、エマは驚いて言葉に詰まる。
まして心配していてくれるなんて……とエマは嬉しさのあまり身分も忘れてヴァレリアを抱きしめ返す。


「ふたりとも、感動の再会はそこそこにして本題に入ろう。ヴァレリア、君に頼みがあるんだ」


やんわりとセオドアが本題に戻し、ヴァレリアがエマを放してきょとんとした顔で問い返す。


「頼み?」

「そう。ギルバート様を救うために」

「あっ……。それでエマさんを?」


エマは、おなかに頭をつけるくらいの意気込みで頭を下げた。


「ヴァレリア様、一生のお願いです。どうか私をギルのところまで連れて行ってください!」

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