王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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ヴァレリアが知っている今の状況はこうだ。
昨日の夜会には、選ばれなかった方の令嬢という立場からヴァレリアは参加していなかった。
しかし、父親のマクレガー侯爵は国政を担う一貴族として参加していた。
王太子は最初から顔色が悪かったが、シャーリーンとの婚約を告げた後、突然倒れた。
それだけならただの過労かとも思えたが、シャーリーンの様子がおかしい。ガタガタと震えながら「私じゃない」と何度も繰り返している。
マクレガー侯爵はシャーリーンの態度がおかしいことをその場で責め立てた。
ヴァレリアから別に好きな人が出来たと告げられても、侯爵はまだ納得はしていない。ましてライバルであるキンバリー伯爵の娘が王太子妃になるなど、言語道断だ。反対出来る要素があるならいくらでも反対してやるという心づもりだった。
ごねた甲斐もあって、婚約に関してはまた機会を改めてということになった。
その後、ギルバートは三階の自室へと戻され、医者による診察を受けたが、目を覚まさないこと以外はおかしなところもなく、医者もお手上げ状態らしい。
原因を知っているのではないかとシャーリーンは尋問を受けたようだが、なにも分からないと言い張っているという。王太子が意識不明だと知れ渡るのを防ぐため、現在、王太子への面会は限られている。
「そんなわけで、王太子様の部屋に行くには許可がいるの。今のところ、無条件に会えるのは医師とご家族。シャーリーン様に関しては、医師が同席するときだけはギルバート様との面会を許されているらしいわ」
「そうですか」
それでは、いくらヴァレリアでも王子の部屋まではいけないのだ。
肩を落としたエマに、ヴァレリアは励ますように肩を撫でた。