王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


「折れてはいないが、熱を持ってるな。城に戻って治療しないと」

「いいよ。父上にばれると面倒だ」

「そういうわけにもいかないだろう。……ああそうだ。城下町にいい薬屋があるんだ。そこへ行こう」

「薬屋?」


ギルバートが問いかけると、セオドアは自分のことでもないのに得意げに頷いた。


「グリーンリーフという名前の、夫妻と娘二人でやっている薬屋だよ。遠征に出るときに、毎回医者が随行できるわけじゃないからさ。試しに一度、そこの薬を買ってみたんだ。そしたらすごい効き目でさ。それからたまに買いに行っている。痛み止めも、湿布薬もあるから、それで治療しよう」

「へぇ。気付かなかったな。そんな店ができていたとは」

「小さな店だよ。城にまっすぐ続く表通りじゃなくて、端のほうにあるんだ。でも口コミで結構広まってるようだ」

「へぇ。面白そうだな、行ってみよう」


ギルバートの怪我は、実際そこまでひどいわけではなかった。馬にも自力で乗れたし、手綱の扱いも危なげない。
けれど今度はセオドアが先導する形でゆったりした歩みで街へと向かった。

城下町へ戻り、セオドアの案内でグリーンリーフに向かう。
大きく塀で囲まれた城下町の、一番東側の通りにその店はあった。木の風合いをそのまま生かした壁、看板も木に掘られた文字に色を付けたいかにも自作風のものだ。

些末だが素朴な印象は悪くなかった。遠慮なく入っていくセオドアに続いて入ったギルバートは興味津々で、店内を見渡す。カウンターがあり、その下とカウンターの内側の壁がすべて棚になっており、隙間がないほど籠が詰められている。
カウンターの外側には木製の小さなテーブルと椅子が置いてあり、テーブルの上には丸い籠があった。中には飴玉が入っているようだ。

セオドアは躊躇なくそこに座ったので、ギルバートも向かいに座る。そして、置いてあった飴玉を口に入れると、外を走って少し痛みのあった喉から、痛みがすっと消えていった。

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