王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
8.身分を超えるもの


国王は今、老年の男と向かい合っていた。
男の名はデイモン=メイスン。二十年前に薬や化粧品を販売するメイスン商会を興し、業績を上げ続けていた。彼は国内よりも国外への輸出に力を入れていて、多くの輸出ルートを持っている。メイスン商会と言えば、国内よりも国外のほうが通りがいいくらいだ。


「で、どういう用件なんだ? メイスン君」

「事業のことで提案があるのです」

「薬の輸出販売だったな。いい成果が出ていると財務官からは聞いているが」

「ええ。販売ルートは徐々に拡大しております。支援者であるノーベリー伯爵も、もっと多く輸送できるようにと大型船の造船への援助を行ってくださいました。とはいえ我が商会が扱う商品はそこまで大きいわけでもありませんし、この販売ルートを我々だけで独占するのも惜しいと思い始めましてね」

「ほう」

「他国への輸出は現在商人任せになっています。商人は援助してくれる貴族と、運搬してくれる船を探さなければならない。これは元々資産がなければ、簡単に出来ることではない。だから、貴族とつながりのある商人しかできず、交易の発展が遅れているのです。今回、私が提案したいのは、自らが船を準備できない規模の会社も、我々の船を使って、海外への販売ができるようにしましょうという提案です。これにより、国内すべての商人にチャンスを与えることができると思っています」

「言っていることが遠回しすぎてわからん。どうしたいのだ」

「商人ギルトを設立し、一つの商業機構として他国と対等に交渉出来るようにしたいのです。既に他国には多く商人ギルドが存在しております。今のまま単独輸入にかぎっていれば組織力で負けるのは必至。それにギルド化することで、一定の検査基準を提示できます。これは品質保証という意味でメリットがある」

「ほう」

「そして商人ギルドの信用性を確保するために、国王様からの公認が欲しいのです」


そこへ衛兵が駆け込んでくる。
< 150 / 220 >

この作品をシェア

pagetop