王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「君は確かに薬を作る。だけどそのほとんどは病気やけがを直すものだ。そういう魔術を使う人間を、物語では白魔術師というのだそうだよ。女の子だったら白魔女と言えばいいのかな。そこは俺も、勉強不足で知らないけど」
「……白魔女?」
「そう。たしかに君の作る薬は、魔法のようだよ。でもいい魔法だ。誇ればいいじゃないか。それが俺の妃になれない理由だというなら、俺は諦めないよ」
「でも」
「でもじゃないよ。魔女が、悪意を持って魔法を使う悪いものだと定義するなら、君は魔女じゃない。だって君には、いつだって悪意はないじゃないか。怪我をした人、病気の人、助けを求める人。そんな人のために使う魔法なんだったら、何がいけないって言うんだい?」
ポロリとこらえきれない涙が落ちた。
「それにね、俺は今のように身分の高い者だけが政治に携わるような国じゃなく、能力のある人間の意見が通る国を作りたいんだ。それには、今の貴族社会と戦っていかなきゃならない。俺は戦って疲れるだろう。そんなときに、君のお茶があれば、俺はまた元気になれる。俺を支えて助けることができるのは君だけなんだよ」
魔女だということもギルにとっては障害じゃないというのなら、エマにはもう悩むことなどなかった。
「私で、……大丈夫?」
泣きながら小首を傾げるエマに、ギルバードが満面の笑みで応える。
「君じゃなきゃ無理だ」
「……大好きっ」
エマは自分から、ギルバートに抱き付いた。