王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「エマ」
ギルバートは優しくエマの髪を撫で、そして、少し顎を持ち上げ、彼女のぷっくりとした唇に口づけた。
「誓いのキスだ」
「こんなところで?」
「はは。場所なんて関係ないよ。俺と君の気持ちが重なったのなら、どこでも最高の場所だ」
「うん。そうね。ありがとう」
頬を染め、潤んだ瞳でギルバートを見上げると、彼は感極まったように再び彼女を引き寄せる。
「……可愛いな! エマは」
チュッチュッチュッと何度もなるリップ音。ギルバートは頭や頬、唇と、何度もキスを繰り返す。
急に激しくなる愛情表現に、エマはドキドキしっぱなしだ。
「ギル、あの、やめて。その……」
「どうして? 好きな子にキスしたいのは普通のことじゃない?」
「でも……恥ずかしいし」
「慣れてよ。だって初めてなんだ。一緒にいて嬉しいのも、可愛くて可愛くて抱き締めたくて仕方ないと願うのも」
ぎゅっと抱き締めて、更に沢山転がった毛布をかぶる。ただでさえ狭い牢の中に、更に狭いふたりきりの空間が、出来上がる。
「……好きだよ。エマ。君のことを思い出せてよかった」
心底安堵したような声に、エマの心も蕩けていく。
「私も、安心した。……私のこと、怖がらないでくれたから」
「さっきの魔女の話かい? ……怖がらずにいられるのは君が誰かに悪いことをするはずがないと信じられるからだ。君自身の力だよ」
それは、エマの心にものすごく自信をくれる一言だった。