王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
気が付いた時には、エマはベッドに横になっており、隣にはギルバートが寝ていた。
狭いベッドだから当然彼とは密着する形になり、少し身じろぎしただけでギルバートのほうも目を覚ます。
「お、おはよう」
「おはよう、エマ。はは、なんかドキドキするな」
照れたように軽く頬を染めてほほ笑むギルバートに、エマの胸の動悸も高まったが、それよりも時間のほうが気になった。
「そんなこと言っている場合じゃ……もしかしてもう朝なんじゃ……」
エマが話している途中で、ギルバートの従者のリアンが、血相を変えてやって来た。
「なにしてるんですか、王子殿下!」
「ついに気付いたのか。うるさいぞ、リアン」
「王太子ともあろうお方が、牢でひと晩を明かすなど!」
「ガタガタうるさい。お前の声で人に知られたらどうするんだ」
ギルバートは、リアンをなだめた後、エマを振り返って優しく微笑んだ。
「今日こそはここから出してやるから。待ってろよ」
「うん」
その笑顔は頼もしく、エマの心に勇気が湧いてくる。
(……私も、頑張ろう。国王様や、国民たちに認めてもらえるように)
もう自分を卑下する気持ちは浮かんでこなかった。
あのギルバートが、自分を選んでくれたのだ。彼が必要だと言ったのだ。だったら、精一杯彼の力となるべきだ。