王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
見る見るうちに、シャーリーンの瞼に涙が盛り上がっている。
「……なによ。本当に嫌な女ね。こんなもの渡して、勝ち誇ったつもり?」
「そうかも知れません。だって、シャーリーン様ってば態度が悪いんですもの」
エマもはっきり言ってやる。
シャーリーンは驚いたように目をぱちくりとした後、香水を奪い取るように手に取り、ふたを開けて香りを嗅いだ。
すう、とシャーリーンの瞳から頬を伝って涙が落ちる。
「……うっ」
「シャーリー……」
名前を呼び終わる前に、彼女はエマをぎゅっと抱き締めた。
「悔しい。……こんな庶民の娘に負けるなんて」
ここまで来てもこの発言だ。もはやこの意地っ張りさ加減が可愛らしいとさえ思ってしまい、エマは彼女の背中をやさしくさする。
「そうですね。ですから幸せになっていただかないと。私を見返せないでしょう?」
「……もうっ、いやになるわ」
そう言いながら、シャーリーンは子供のように泣きだした。
エマは彼女が泣き止むまで、彼女を抱きしめ続けていた。
その間、ギルバートとヴァレリアは呆れたように目配せをしていた。
「やれやれ」
「エマは、嫌われない王妃になりますわね、きっと」
「それはいいけれどね。こう人気者になられると、こっちがやきもちを焼いてしまいそうだ」
苦笑するギルバートに、ヴァレリアは思わず笑ってしまった。