王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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城についたエマは、リアンに誘導され控室に連れていかれる。そこには晩餐会用の着替えが用意されていて、エマは直ぐに数名の侍女に囲まれ、着替えをさせられた。
一通り準備が終わると、ギルバートが入ってくる。
「着替えは終わったかい?」
「ええ。お待たせいたしました」
ギルバートは、黄色のカラードレスをまとったエマに見とれ、ため息を吐き出した。
「エマ……きれいだよ。その色も似あう」
晩さん会用のドレスは、エマが選んだ。
ウェディングドレスを作っている最中からブチブチ言っていたバームの希望を聞いた形だ。エマにとっては父親よりもバームのほうが身近な存在であり、彼の意見は簡単には無視できないのだ。
ギルバートはエマの腰に手をまわし、耳元に軽くキスをする。
「ああ、もう。晩餐会などどうでもいいんだけどな」
「そういうわけにもいかないでしょう。他国からの使者もご臨席いただいているし、メイスン商会にとっては顔を売るチャンスにもなるわ」
国王からの承認を経て、商人ギルドが立ちあげられてから一年に満たないが、貿易額はうなぎ上りだ。元々商売っ気の強いデイモンは今日の結婚式も商機とみて張り切っている。
「今日は初夜だよ? 俺がどれだけこの日を楽しみにしていたか。半日は寝室から出るつもりないのに」
結婚前に懐妊して、あしざまに言われるのはエマだ。それを思い、ギルバートはこの一年、キスだけで耐えてきたのだ。
それまで草食系だった王子は、ことエマに関しては欲望ばかりが膨らんでいく。誓いを破りそうになったことなど一度や二度ではない。
案外と遠慮のない従者リオンが細かに苦言を呈さなければ、流されてしまいそうな夜も実際にはあったのだ。