王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「そうは言ってもお役目ですからね。さあ、さっさと準備なさってください」
「リアン」
ふたりの間に割って入ってきたリアンは、ギルバートを軽くあしらうと、エマには優しくほほ笑んだ。
「エマ様。お疲れでしょうがこれも王家のためです。よろしくお願いします」
「どうしてお前はエマには愛想がいいんだ」
「奥方様は王家のことを良く知らないのです。丁寧に教えて差し上げるのは当然のことでしょう。それに今日のためにエマ様には栄養剤を作っていただきましたしね。これは頑張らないと」
リアンに胸を張られ、ギルバートは不満を隠せない。エマが人に好かれるのは喜ばしいことだが、その相手が男となると少なからずやきもちも焼いてしまうのだ。
「ああもう、分かった。分かった。夜が更けるまでは務めにまい進するよ」
「では参りますよ」
ギルバートのエスコートに手を乗せる。
リアンがおもむろに扉を開き、エマは歓声で沸き立つ大広間へと入っていった。
国王夫妻、デイモン夫妻、ヴァレリアとセオドア。見知った顔に笑いかけつつ、参列者へのお礼を述べるギルバート。
ただ恋をしただけなのに、エマの世界は一変した。それを望んでいたわけではないし、今も場違いな存在だと自分のことを思う。けれど、この一年をかけてエマは少しずつ自信をつけていった。ずっとギルバートの隣に立つために。