王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
まだ残っている祝宴の場に、退出の挨拶をして、ふたりは新しい寝室へと向かう。
夫婦の部屋を整えるのに、尽力してくれたのは王妃とヴァレリアだ。温かみのあるリーフ柄のグリーンの壁紙、天蓋のついたベッドを彩るカバーは今日のエマのドレスのような黄色だ。壁際には棚が仕立てられていて、エマが扱うハーブが収められている。彼女の薬やハーブティは、今や王室でも大人気となっているのだ。
「今日はもういい。下がっていてくれ」
エマの支度を整えようと待っていた侍女を、ギルバートが自室へと戻す。
ふたりきりになったところで、ようやくバームの上から上着を外す。
息苦しくないか心配だったが、すっかり疲れ切っていたようで、目覚める気配はない。
昼間もずっと飛び回っていたことを思い出し、エマは自然にほほ笑んだ。
「……ありがとうね、バーム」
バームのためにソファに毛布を敷き、柔らかな寝床を作ってやる。
朝までぐっすり眠ってくれるだろう、とそっとその場を離れたとたん、ギルバートに後ろから抱き締められた。
「きゃ」
「もう待ちきれないよ」
「ギル、でもあの。やっぱり、……するの?」
今日は初夜だ。お互い、この日まではと我慢していたのだから、心の準備は、もちろんしていた。だけど予想外にバームがここで寝ることになったので、なし崩しになるのかと思っていたのだ。