王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
下着姿になったエマはそのままベッドに横たわる。
初めての行為に体がこわばってくるが、緊張しているのはギルバートも同じのようで、神妙な顔で目があったときにお互いに笑ってしまった。
「ふふ、なんかおかしいわね」
「だな。……俺と君の間で、こんなに緊張するなんてな」
それで少し体から力が抜けた。
ギルバートも吹っ切れたように、甘く深い口づけを、繰り返しエマに落としていく。
彼の大きな手が触れる感触、切なげにゆがめられる彼の瞳、徐々に荒くなり交じり合う呼吸。
全部覚えていようとエマは思った。
ギルバートの、エマしか知らない男としての顔。それは、きっと、彼を見失いそうになった時に、エマを支えてくれるはずだ。
「エマ。……愛してる。今日という日をどれだけ待ったことか」
「私もよ。ギル。私、誓うわ。あなたにとっていつだって最良の薬であることを」
「俺もだ」
上からエマを見つめるギルバートは蠱惑的にほほえむ。
エマは目を閉じて誓う。恋という名のこの薬を、いつまでも失わずに持ち続けることを。
二人の甘い声と吐息が、密やかに部屋中に広がっていく。
長い夜が始まろうとしていた。
――やがて来る朝は、一羽のマグパイの、嫉妬にも似た叫びとともに始まる。
それから先は、また別のお話。
【Fin.】