王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
王城ってのは無駄に警備兵の多いところだ。
だが、空を飛べる僕にとって、その警備は結構穴だらけに見える。
この国の王城には騎士団のための施設がいくつもある。そのため、騎士団員の多くは王城で待機したり訓練したりしているが、騎士団の仕事は主に外向きのことだ。
国王が他領地へ視察に向かうときの警護、他国からの襲撃からの対応、国内の災害に関する救出対応なんかが騎士団の仕事にあたる。
対して、王城内の警備など内向きの仕事は管轄が違い、近衛兵団の仕事となるのだ。
そしてその衛兵には主に下級貴族の次男以下が就くことが多い。
つまり、こいつらは貴族のぼっちゃんっていうわけで、野生の厳しい生活をかいくぐってきた僕から見れば、目の付け所が悪く、対応が甘いのだ。
当初、エマの居場所がよく見えるようにと木の低い位置に作った巣は、知らないうちに取り払われてしまったが、さらに上の奥のほうに作ったら、全く気づきやしない。
これまでではそれでも良かったが、エマが王太子妃になった今は話は別だ。
身分が上がったことで、エマには危険がつきものなのだ。こいつらの警護では安心して任せられない。
そう思って城の周りをうろうろしているのに、あいつらは僕のことを追い払おうとするんだから気に入らない。