王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~

気に入らないといえば、ギルバートだ。この国の王太子で、エマの夫でもある。

エマに好かれているのをいいことに、結婚式の日なんて僕というお目付け役がいるのにも関わらず、エマにちょっかいを出して、は、は、裸にするなんて。なんてことをするんだ。くちばしでつついてやればよかった。

とはいえ、人間が結婚したらそういう行為をすることくらいは知っている。
生き物はすべて、生殖活動にいそしむものなのだ。むしろ結婚という約束をしてからでないと生殖活動をしないあたり、人間ってやつは面倒くさい生き物だと思っている。

頭ではわかっているけど、相手がエマとなると話は違うんだよ!

思い出すだけで頭に血がのぼる。いけないいけない、少し冷静になろう。


僕はひとっ飛びして、王城敷地内の一番高い木の中ほどにとまる。
ここが、エマの部屋が一番よく見える場所だ。

今日もギルバートがいるな。ちょこちょこ入り浸っているな。仕事しろよ。

それでも、文句を言いに行こうとまでは思わないのは、エマが心の底から嬉しそうだからだ。

エマはみんなからいつも笑顔のやさしい娘だと思われている。間違いじゃない。確かにそういう側面もあるだろう。
だけど、笑顔にも種類がある。エマがあんな風に心から笑うのは、実はそんなに多くないと僕は思うのだ。

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