王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
*
僕とエマの出会いは、今から十年ほど遡る。
ここより北の、ノーベリー領の端にある屋敷で、ふたりの小さな魔女が遊んでいるのを僕はよく見ていた。
姉がエマ、妹がジュリア。ほかに子供がいないから、いつもふたりだけで遊んでいた。
「エマが面倒見てくれるから助かるわ」
母親のベティのつぶやきに、ジュリアは無邪気に笑ったが、エマはほんの少し口元を緩ませただけだった。
ふたりは仲が良かったけれど、子供なんだからケンカだってする。年齢の違う者同士が一緒にいたら、通常は年が上のものが我慢させられることは多いのだろう。ジュリアが親に泣きついて、エマはいつもひとり外に出て、歯を食いしばって涙をこらえていた。
ある日、僕は近寄ってみたんだ。
“なぁ、泣くなよ”
まだ使い魔契約をしていないときで、エマは僕の言葉を理解はしていなかったと思う。彼女は僕を見て、本当に“ぽかん”という言葉が当てはまるような呆けた顔をした。
そして思い立ったように、ぎこちない笑顔を向け、声真似をしてきた。
「く、くるっくる……」
僕は笑ってしまった。なんだよその顔。目の周りが赤くて、すごく不細工だぞ。それにそのへたくそな声真似。そんなんで、コミュニケーションがとれると本気で思ったのかよ。
僕とエマの出会いは、今から十年ほど遡る。
ここより北の、ノーベリー領の端にある屋敷で、ふたりの小さな魔女が遊んでいるのを僕はよく見ていた。
姉がエマ、妹がジュリア。ほかに子供がいないから、いつもふたりだけで遊んでいた。
「エマが面倒見てくれるから助かるわ」
母親のベティのつぶやきに、ジュリアは無邪気に笑ったが、エマはほんの少し口元を緩ませただけだった。
ふたりは仲が良かったけれど、子供なんだからケンカだってする。年齢の違う者同士が一緒にいたら、通常は年が上のものが我慢させられることは多いのだろう。ジュリアが親に泣きついて、エマはいつもひとり外に出て、歯を食いしばって涙をこらえていた。
ある日、僕は近寄ってみたんだ。
“なぁ、泣くなよ”
まだ使い魔契約をしていないときで、エマは僕の言葉を理解はしていなかったと思う。彼女は僕を見て、本当に“ぽかん”という言葉が当てはまるような呆けた顔をした。
そして思い立ったように、ぎこちない笑顔を向け、声真似をしてきた。
「く、くるっくる……」
僕は笑ってしまった。なんだよその顔。目の周りが赤くて、すごく不細工だぞ。それにそのへたくそな声真似。そんなんで、コミュニケーションがとれると本気で思ったのかよ。