王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「嘘でしょう? 父さん。本当に私が?」
「まあ、クラリス様が言うならなぁ……。なあに、王城勤めって言ったって、ここから目と鼻の先じゃないか。それにお前にはバームがいる。困ったらバームでやり取りできるんだ。お前を選んだのはきっとそのせいだよ」
たしかに、使い魔が猫だとしたら連れていくわけにいかないが、鳥ならば連れて行かずとも出入りが可能だ。
特にマグパイはここいらではよくいる鳥だから、どこで見ても違和感はない。
「……嘘ぉ、ひとりでやれっていうの? ……そんなぁ」
「ひとりだなんていうなよ。僕が守ってやるって」
得意げに胸をそらし、格好いいセリフを吐くのはバーム。
気持ちは嬉しい。頼もしくないとも言わない。
だけど、その小さな体ではできることは限られているではないか。
「なっ」
羽を広げて気どってみせるバームに、エマは頭を抱えたまま投げやりに返事をした。
「はいはい、ありがとう、バーム」
「こら、もっと感謝しろよ!」
バームはむっとしたように彼女の髪をくちばしでつついた。