王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
(でも、毎週やったところで、同じ人と会ってるんじゃ意味がないんじゃないかしら)
高貴な人の考えることは分からない。出会いを求めるのなら、集める人をそもそも変えなきゃいけないと思うのだが。
苦労している人たちを目の当たりにするエマは、王子に不快感が湧いてきていた。
(結婚相手くらい、自分で見つければいいじゃないの。いろんな人を巻き込んで疲れさせて……見たことはないけれど、王子様も結構わがままなのね)
眉根にしわが寄ったのに自分で気づいて慌てて顔を整える。
薬屋として、お客には笑顔で接さなくてはならない。なにより大切なのは、客の気持ちを軽くしてあげることなのだから。
「無理なさらないでくださいね。ヘレンさん」
「ありがとう。でもここの薬は飲みやすいし効くから、助かってるわ。また無くなったころ来るわね」
「はい。こちらこそいつもありがとうございます」
ヘレンを見送ったあと、エマがジュリアを振り向くと、さっそく在庫量が書き換えられていた。
「ありがとう、ジュリア」
「うん。あの人五本も買っていったよ。これはすぐなくなりそうだね。母さんに作ってもらわなくちゃ」
「そうね。ホントに……作るほうが追いつかないわね」
エマとジュリアは顔を見合わせてため息をついた。