王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~



その数日後。グリーンリーフの前に豪奢な馬車が横付けされた。ふたりの従者を伴い、仰々しい態度で中に入ってきたのは、尖った顎に鼻の下の髭が特徴的な壮年の男性だった。


「いらっしゃいませ」

「あー、わしはキンバリーというものだが」

「き、キンバリー伯爵様?」


キンバリー伯爵は現在城下町の屋敷に住んでいるが、自分の領地はまた別の土地にあり、そちらにも屋敷を持っている。今は社交の時期に当たるため、城下町のほうに滞在しているのだ。


「ここがグリーンリーフかね。いつもヘレンが薬を買っているとか」

「ええ。ヘレンさんには得意にしていただいていて……」

「いい話がある。店の主人は誰だ?」

「お、お待ちください」


店番をしていたエマとジュリアは顔を見合わせたのち、父親を呼びに行った。その後、父と母は伯爵を奥の工房に引き入れ、しばらく何事か話していた。

エマはお茶を出しに工房に入ったが、その時の伯爵と父母の顔は真剣そのものだった。

そして半時も過ぎたころ、父母は腰を九十度折り曲げて伯爵を見送ったのだ。

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