王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
エマがお茶を用意するまでの数分間、ふたりは沈黙を持て余すように目を合わせたり逸らしたりを繰り返している。
「どうぞ。リラックス効果のあるお茶です」
エマの声に、はじかれたようにふたりは顔を上げた。
「難しいお顔では何事もうまくいきませんよ。まずは笑ってくださいませ」
「あ、ありがとう」
「すまんな、エマ」
「いいえ。温まりますよ。どうぞ」
勧められるままひと口含んだヴァレリアの口もとに笑みがのる。
「おいしい」
「そうだな、うまい」
同意したセオドアを見て、ヴァレリアはようやく顔を綻ばせ始めた。
「……誰にもお話したことはありませんの。言っても叱られるだけですし」
「叱ったりなどしませんし、あなたの不利になるようなことは漏らしません。なあエマ」
「は、はい、もちろんですっ」
半ば強制的に仲間に入れられた感じはあるが、とりあえずエマも同意する。
それを確認し、真顔で頷くセオドアに、ヴァレリアはホッとしたようにぽつりぽつりと話し始めた。