王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
エマは心配になり、彼を見つめる。ギルは綺麗な金髪で、もともとの肌が白い。でも言われてみれば少し顔色が悪いようにも思えた。だがそのアンニュイな雰囲気にドキドキしてしまって、エマは自分を叱咤する。
(ダメダメ。私は薬屋なんだから。見とれるんじゃなくてちゃんと診断をしなきゃ)
顔が熱くなるのを止められず、気付かれたくなくてふっと目をそらした。
だけど心臓は簡単には平常に戻ってくれない。
ギルといると、エマは嬉しくもあり困りもする。
ギルはただのお客さんでハーブに興味があるだけなのだと必死に自分に言い聞かせてみても、彼に会えば自然と心が踊りだしてしまう。でも恋をしたところで叶うはずがないのだから、とまた言い聞かせ、何とか自分を抑えているような状態だ。
「じゃあソファで待ってて。すぐお茶を入れるわ」
目をそらされて、ギルは苦笑したままソファへと移動した。
「……つい、君にはいろいろ言ってしまうな。……エマはいくつだい?」
「私? 女の子に年を聞くなんて失礼よ」
「そうか。それもそうだな。ちなみに俺は十九なんだ。もうすぐ二十歳になる」
「だったら同じくらいよ。私のほうが少しお姉さんね。今二十歳なの」
ギルが先に明かしてくれたことで、エマも結局年を教えてしまう。
背も高く体つきもしっかりしているからピンと来ないが、ギルは年下なのか。
そう思ったら少し気が大きくなった。
「はいお茶。どうぞ」
「ありがとう」
「おまけよ、はい」
城下町の実家から薬を運んだ時にもらってきたジンジャークッキーだ。グリーンリーフのクッキーはもちろん特製だ。疲労回復の効果がある。ひと口食べたギルは、目を輝かせた。