王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「……もういい! そこまで言うならわしが決めてやる」
「父上?」
「ギルバート。これは遊びではないのだ。お前の結婚は、国の繁栄にかかわることなんだからな」
国王はつかつかと会場の中央に向かうと、両手をぱんぱんと軽くたたいた。
それに呼応するように楽団が音を止める。
「皆の者、毎週にわたる舞踏会、よくぞ今まで付き合ってくれた。わしはこれまでの舞踏会を通して、ギルバートの妃にふさわしいと思う令嬢をふたりにまで絞った」
「父上っ」
ギルバートは国王を止めに入ろうとするが、すでに厚い人の壁が出来上がっていて、たやすくたどり着けない。
「マクレガー侯爵令嬢・ヴァレリア殿とキンバリー伯爵令嬢・シャーリーン殿だ。今後は舞踏会をやめ、お二人には一ヵ月間とギルバートとの交流を深めてもらおうと思う。ひと月後、ギルバートが選んだ女性を妃として紹介することにしよう」
「嬉しい!」
わっと声を上げたのは、黒褐色の艶のある髪が美しいシャーリーン嬢だ。
「さすがは我が娘、オニキスのように美しいと言われるだけはある」
「お言葉ですが、うちのヴァレリアは美の妖精と謳われておるのですぞ」
自慢気につぶやくのがキンバリー伯爵。それにムッとしたように突っかかっていくのがマクレガー侯爵だ。
立場としては侯爵が上だが、同年代の彼らは昔からのライバル関係にある。
ギルバートは自分の意思を置きざりにして進んでいく結婚に慌て、国王の所業に頭を抱える。