王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~

候補者を選ぶまではいい。なぜ二人なのだ。どちらを選んだとしても、選ばれなかった方はいい笑いものになってしまうではないか。

マクレガー侯爵もキンバリー伯爵も、財力、政治力をともに備えた国の重鎮だ。この結婚話の結果如何では顔に泥を塗られた気持ちにもなるだろう。かといって、どちらも選ばなければ今度はギルバートの決断力が問われる。

国王の発言で、他の参加者たちの熱は一気に引いたようだ。自然にギルバートの周りに空間がひろがり、そこにシャーリーンが駆けてくる。
黒褐色の腰まである長い髪、ぱっちりとした勝気そうな瞳、シャーリーンは快活で色気ある美しさを持つ十七歳の女性だ。


「ギルバート様、嬉しいですわ。ぜひ私を選んでいただけるよう頑張りますわね」

「あ、ああ」


その後ろから、父親に背中を押されるようにしておずおずと清楚な女性がやってくる。
流れるような金髪に、陶器のような白い肌。長いまつげに見るものを引き付ける艶のある唇。妖精の国というものが本当にあるのなら、いるのはこんなはかなげな女性かも知れないと思わせる、神秘的な美しさの持ち主だ。


「あの、こ、光栄ですわ。ギルバート様、わ、私、……ええと、よろしくお願いいたします」


彼女が頬を染めるだけで、周りの男から感嘆の声が上がる。
ヴァレリアは、城に出入りする男みんなのあこがれの女性なのだ。
だが、ギルバートはどちらの女性にも苦手意識がある。シャーリーンは気が強すぎるし、ヴァレリアは気が弱すぎるのだ。


「俺は……」

「さあさあ、では今日はこれまで時間を費やしてくれた皆への感謝の宴としよう。たくさん食べ、自由に楽しんでほしい」


ギルバートの声を遮るような国王の発言で、場は一気に盛り上がり、人々は再び始まった楽団の演奏に乗って動き出した。

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