王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
*
王城のどこからか流れてくる宮廷音楽をBGMにして眠りについた翌日、エマのもとに、騒がしいお客がやってきた。
このとき、エマはバームを部屋の中へ呼び寄せて、話をしていた。
「夜間の音楽は鳥にとっても迷惑な話だよ」とバームが愚痴を言い、エマが笑う。
そんな和やかな会話は、勢いよく開いた扉によって中断させられたのだ。
扉を開けたのはキンバリー伯爵家の侍女、ヘレン。しかし、彼女を押しのけるようにして先に入って来たのは華のある顔立ちの女性だった。肩が大きく開いた紫色のドレス、あらわになっている鎖骨を、黒褐色の髪が隠すように胸のあたりまで広がっている。美しく官能的な雰囲気のあるその女性に、エマは思わず見とれてしまう。
「ちょっと、お父様が連れてきた薬屋ってあなた?」
「え? はあ。いらっしゃいませ」
「え、あ、きゃっ、何よその鳥!」
彼女はバームを見るなり口元を押さえ、シッシッと右手で追い払う仕草をする。
貴族の令嬢によくある態度に、エマはバームを窓際まで連れて行き、「バーム、ごめんね。出ていてくれる?」と小声で呼びかけた。
バームは黙って小窓から出ていったが、近くの枝に陣取っているところをみると、見張ろうとしてくれているのだろう。
令嬢は額をそっと手の甲でぬぐうと、呆れたようなため息をついた。
「ふう。あなた、なんで鳥が入って来て平気なの?」
「あの子は賢い鳥です。悪いことはしませんわ」
「鳥にそんなことが分かるわけないでしょう。よく効く薬を作ると聞いたのに、大丈夫なのかしら」
馬鹿にしたような物言いに、エマもだんだん我慢が出来なくなり、ムッとする。
城のお客には他にも居丈高な人はいるが、この令嬢はその中でもダントツで態度が悪い。
王城のどこからか流れてくる宮廷音楽をBGMにして眠りについた翌日、エマのもとに、騒がしいお客がやってきた。
このとき、エマはバームを部屋の中へ呼び寄せて、話をしていた。
「夜間の音楽は鳥にとっても迷惑な話だよ」とバームが愚痴を言い、エマが笑う。
そんな和やかな会話は、勢いよく開いた扉によって中断させられたのだ。
扉を開けたのはキンバリー伯爵家の侍女、ヘレン。しかし、彼女を押しのけるようにして先に入って来たのは華のある顔立ちの女性だった。肩が大きく開いた紫色のドレス、あらわになっている鎖骨を、黒褐色の髪が隠すように胸のあたりまで広がっている。美しく官能的な雰囲気のあるその女性に、エマは思わず見とれてしまう。
「ちょっと、お父様が連れてきた薬屋ってあなた?」
「え? はあ。いらっしゃいませ」
「え、あ、きゃっ、何よその鳥!」
彼女はバームを見るなり口元を押さえ、シッシッと右手で追い払う仕草をする。
貴族の令嬢によくある態度に、エマはバームを窓際まで連れて行き、「バーム、ごめんね。出ていてくれる?」と小声で呼びかけた。
バームは黙って小窓から出ていったが、近くの枝に陣取っているところをみると、見張ろうとしてくれているのだろう。
令嬢は額をそっと手の甲でぬぐうと、呆れたようなため息をついた。
「ふう。あなた、なんで鳥が入って来て平気なの?」
「あの子は賢い鳥です。悪いことはしませんわ」
「鳥にそんなことが分かるわけないでしょう。よく効く薬を作ると聞いたのに、大丈夫なのかしら」
馬鹿にしたような物言いに、エマもだんだん我慢が出来なくなり、ムッとする。
城のお客には他にも居丈高な人はいるが、この令嬢はその中でもダントツで態度が悪い。