王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


「魔女だってばれたら、……やっぱり捕まるのかしら」


しん、と静まる。そう、バーネット一家は魔女の家系なのだ。

遠い昔、もう百二十年も前に王都では魔女狩りが横行した。
そのとき、彼女ら魔女を保護したのは、辺境に領地を持つノーベリー伯爵だった。
彼女たちが身をひそめたことにより、魔女狩りは終わりを迎え、今では魔女は物語の中だけの存在となっている。

しかし、実際のところ魔女たちは、伯爵の支援を受けながら隠れて細々と生きのびてきたのだ。

そして、今から二十年ほど前、当時から最大の魔力の持ち主とされていた大魔女クラリスの夫・デイモンによって、再び陽の光の当たる場所へと出てきた。

自分たちの力で稼いで、生きていく。そのためにいつまでも隠れていてはならない。
それがデイモンの主張で、彼はメイスン商会を立ち上げ、薬屋として働く魔女たちを支援し続けてきたのだ。
今では家族単位で独立し、魔女だとばれないように気を付けながらも人の中で生活を続けている。


「でも俺たち、何も悪いことなんてしてないじゃないか。むしろ、人の役に立つ薬をつくっている」

「それでも捕まって殺されたのが百二十年前の魔女狩りよ?」


ジョンとベティの話し合いには結論が出そうにない。
ジュリアもオロオロと父母を見つめるだけだ。
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