20代最後の夜は、あなたと
その日の午後、伊勢くんと二人で新商品のパンフレットの校正を進めていた。


数値データのフォントはとても小さくて、ひとつひとつチェックするのは大変だった。


「宮本、ここ違くないか?」


「ああ、それは差し替えになったんじゃなかったっけ?」


「ちげーよ、差し替えは次のページだろ?


大丈夫か、おまえ」


「ごめん、休みボケかな」


「・・・課長と、なんかあったのか?」


伊勢くんは、声を低くして聞いてきた。


忘れてた、伊勢くんは休み中に課長と私が会ってたこと知ってるんだった。


「えっと・・・あったと言えばあった、かな」


「そういうことかよ」


それっきり、伊勢くんは何も話さなくなった。


退社時間になり、課長は外出して直帰だし、私もいつも通り帰り支度を始めた。



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