20代最後の夜は、あなたと
伊勢くんはしばらく電車に乗って駅で降り、近くのスーパーに寄った。


「おまえ、好き嫌いある?」


「ないよ」


「ふーん、ちゃんとしてんだな」


伊勢くんは慣れた手つきで、食材をカゴに入れていく。


「あの、さ、これからどこ行くの?」


「え、俺んちだけど?


夕飯作るから、食いながら話そうかと思って」


「え、悪いよ、傘貸したくらいでそこまでしてくれなくていいよ」


「傘もあるけど、大事な話があるから。


店では話したくないんだ」


どういうこと?


めっちゃ怒られるとか?


私、仕事で迷惑かけたっけ?


不安でいっぱいになりながら、伊勢くんちにオジャマした。


「どうぞ」


「おじゃまします」


シンプルだけど、キレイに片づいた部屋だった。


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