20代最後の夜は、あなたと
伊勢くんは何も言わず、私の右手を握ってくれていた。
課長を憎むとか、隣にいた美人に妬くとか、そういう感情はいっさい出てこなかった。
涙も流れることはなかった。
課長はたぶん、私をからかっていただけなんだ。
俺が本気になれば簡単に落ちるんだよ、な?とか、課長が誰かに自慢してたとしても。
課長の罠にひっかかった私がバカだったんだなー、と反省はしても。
課長に事実を確認する気にもなれないし、もうどうでもよかった。
今日が金曜日で良かった。
課長に会うまで、2日間ある。
「宮本んち、次の駅じゃなかったっけ?」
「え、あっそうそう、ごめんごめん」
伊勢くんは、追求することも励ますこともなく、ふたりで黙って私の部屋まで来た。
「送ってくれて、ありがとう。
また月曜にね、お休み」
伊勢くんの左手を、そっとほどいた。
課長を憎むとか、隣にいた美人に妬くとか、そういう感情はいっさい出てこなかった。
涙も流れることはなかった。
課長はたぶん、私をからかっていただけなんだ。
俺が本気になれば簡単に落ちるんだよ、な?とか、課長が誰かに自慢してたとしても。
課長の罠にひっかかった私がバカだったんだなー、と反省はしても。
課長に事実を確認する気にもなれないし、もうどうでもよかった。
今日が金曜日で良かった。
課長に会うまで、2日間ある。
「宮本んち、次の駅じゃなかったっけ?」
「え、あっそうそう、ごめんごめん」
伊勢くんは、追求することも励ますこともなく、ふたりで黙って私の部屋まで来た。
「送ってくれて、ありがとう。
また月曜にね、お休み」
伊勢くんの左手を、そっとほどいた。