20代最後の夜は、あなたと
その日の夜。


家に帰って速攻でシャワー浴びてビールを飲んでいたら、電話が鳴った。


画面を見ると、課長からだった。


「もしもし」


『紗和、元気か?


急な出張になってごめんな』


「元気だし、仕事なんだから平気だよ」


『水曜の夕方には東京へ戻るから、どっかで夕飯食べよう』


「あ、ごめん、その日は予定があって。


学生時代の友達と会う約束なんだ」


とっさに嘘が出てきた。


これが、私の本心なんだ。


自分が怖くなった。


『そっか、なら仕方ないな。


じゃあ、木曜日に会社でな』


「うん、ごめんね」


短い電話が終わり、シーンと静かになった部屋に一人でいると、あの日ホームで見た課長の姿が目に浮かんだ。


やっぱり、課長にあの日のことを話すべきじゃないかな。


でも、面と向かって話すのは言いづらい。


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