20代最後の夜は、あなたと
木曜の朝。


会社へ行くのが、億劫だった。


どんな顔して、霧島課長に会えばいいんだ。


ため息しか出てこない。


フロアへ昇るエレベーターを待っていたら、


「おはよう」


上から声が降ってきた。


「あ、伊勢くん、おはよう」


「なんか顔色悪くね?」


「ちょっと寝不足なだけだよ、平気」


「無理すんな」


ドキドキしながら、ドアを開けた。


「おはようございます」


「おはよー」


課長は席にいなかった。


良かった、まだ来てないんだ。


簡単にデスクまわりを掃除して、当番だったから給湯室の掃除と備品の補充、ポットの準備をした。


席に戻ると、課長が座っていた。


「お、おはようございます」


緊張しすぎて噛みながら挨拶したら、


「おはよ」


いつも通りで、拍子抜けした。


なーんだ、やっぱり私のことはからかってただけなんだ。


男に飢えてそうだから、ひっかけてやったってことなんだ。


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