20代最後の夜は、あなたと
課長の、メガネの奥の切れ長の目が、私の顔を凝視していた。


獲物を狙う、ハンターの目だ。


「あのメッセージ、どういう意味だよ?」


「そのままの意味です」


「あの女は、確かに元カノだ。


だけど、あれには訳があって・・・」


「言い訳なんて聞きたくありません!」


おかしい。


吹っ切ったはずなのに、涙がポロッとこぼれた。


こんなの、イヤだ。


まだ課長のことを、好きみたいじゃん。


「どいてください」


「イヤだ」


「あと少しで終わりま・・・」


最後まで、言わせてもらえなかった。


課長は、私の後頭部をホールドして、キスしたから。


私の気持ちとは裏腹な、優しくて甘くて、とけるようなキスだった。



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