20代最後の夜は、あなたと
伊勢くんにもらったメモを見ると、


『課長になんか言われたのか?


俺でよければ聞くぞ』


って書いてあった。


優しいな、伊勢くんは。


「ありがと、連絡するね」


伊勢くんに返事をして、パソコンからメールを送ったフリをしてから、


「お先に失礼します」


と会社を出た。


会社の最寄り駅に着いてから、伊勢くんにメッセージを送った。


『心配してくれてありがとう。


また今度、飲みに行こうね』


伊勢くんに甘えるのは、簡単だ。


好きだ、って言ってくれた。


待ってる、って言ってくれた。


それに応えるのは楽だけど、今はまだその時じゃない気がした。


今は、このグチャグチャな胸の奥を、どうにかしてスッキリさせたかった。


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