20代最後の夜は、あなたと
お財布で買収された私は、伊勢くんから幹事の仕事を半分引き継ぎ、事前準備もしっかりやって、旅行前日を迎えた。


営業1課だけで行くから、他の部署はまだ仕事してるけど、明日も早いしみんなそそくさと帰っていく。


私もそろそろ帰ろうと思ってたのに、


「宮本、ちょっと」


「はい」


霧島課長に呼ばれてしまった。


「このデータ入力、やったのおまえだよな?」


「はい、そうですが」


「すぐやり直せ」


「はい?」


「元の資料が間違ってたんだ」


「えっ・・・」


「だから、システム部からまわってきた資料が、間違ってたってことだよ」


早くやれ、と言わんばかりに資料を私に突き出してきた。


「はい、かしこまりました」


なんで今?


もっと早く言ってくれればいいじゃん。


なんで私にばっかり、冷たくするわけ?


しぶしぶ自分の席に座り、入力画面を呼び出した。


伊勢くんが小声で、


「手伝うか?」


って言ってくれたけど、


「伊勢、明日の件で部長に呼ばれてたんじゃないのか?」


聞き耳をたてていた課長に遮られ、


「行ってきます」


と席を外した。


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