20代最後の夜は、あなたと
フロアには、課長と私だけになってしまった。


無言でひたすら入力する私。


猛スピードで頑張って、


「課長、ご確認お願いします」


とプリントアウトほやほやのデータを渡した。


「おっ、早いな」


ペラペラ紙をめくる音がフロアに響く。


「サンキュー、助かった」


課長は立ち上がると、私の頭をポンポンとなでた。


「では、失礼します」


課長に背中を向けてデスクに戻ろうとしたら、後ろから抱きしめられた。


「紗和、明日の夜、待ってるからな」


課長の腕は、力強くてあったかかった。


「行きません、離してください」


「紗和じゃなきゃダメだ」


その時、フロアのドアが開いた。


二人でドアの方向を見ると、伊勢くんが立っていた。


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