20代最後の夜は、あなたと
「霧島課長、ここは会社です。


宮本さんを離してください」


伊勢くんは冷静に告げた。


課長の手がゆるんだ隙に、私は離れた。


「伊勢、紗和は俺の彼女だ。


手を出すなよ。


紗和帰るぞ、支度しろ」


「えっ、あの、でも・・・」


有無を言わせない表情で、課長は私を見下ろしていた。


仕方なく、急いで帰り仕度をして、


「伊勢くん、お疲れさま」


と言って、課長とフロアを出た。


「どっかで夕飯食べるか?」


「いえ、明日は早いのでお断りします。


それと、私は課長ともう関係ありませんので、彼女とか言わないでください」


「紗和、一方的に送ってきたメッセージだけで別れ話済ませるっておかしいだろ?


明日の夜、きちんと話すからな」


じゃあまた明日、と意外なほどあっさりと課長は帰って行った。


そんなに話したいなら、今ここで話せばいいのに。


心の中で悪態つきつつ、家路についた。


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