20代最後の夜は、あなたと
お開きになり、覚悟を決めて課長の部屋のドアをノックした。


「紗和、待ってた」


課長は浴衣が似合いすぎてて、怖いくらいだ。


「おじゃまします」


緊張しながら、窓側の向かい合ったイスに座った。


課長以上は個室で、一人ではもったいないくらいの広さだった。


「明日は、伊勢と出かけるのか?」


「えっ、どうして知ってるんですか?」


「見てればわかる」


「課長がこれから何をお話しになっても、私の気持ちは変わらないです」


「伊勢を選ぶのか?」


「はい」


「そうか」


課長は、明らかに表情が曇った。


「言い訳するけど、紗和が見たっていう女性は、元カノだ。


元カノが、しつこい男に言い寄られてストーカーまがいのことされてて、頼まれて彼氏のフリをしたたけだ。


紗和は信じないだろうけどな」


課長は立ち上がると、窓から夜景をながめながら、


「紗和が誰を選んでも、俺はあきらめないから」


私に背中を向けたまま、誰かに宣言するみたいに言い切った。


「課長・・・」


課長は振り向くと、私を立たせて優しく抱きしめた。


「俺が好きなのは、紗和だけだ」


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