20代最後の夜は、あなたと
自分の部屋に戻るためにロビーを歩いていたら、


「宮本?」


伊勢くんがロビーの椅子に座っていた。


「どうしたの、伊勢くん?


もしかして、待っててくれたとか?」


「悪いかよ」


「心配してくれて、ありがと」


「で、どうなったんだよ?」


「お断りしてきました」


「じゃあ、もうフリーってことだよな?」


「そうだね」


「よっしゃ」


伊勢くんが小さく呟いた。


「でもさ、こんな短期間で、その・・・変えていいのかな」


「俺はいいけど」


「じゃあ、部屋戻るね。


また明日、おやすみ」


「おう、明日な」


よくわかんないけど、一瞬、このまま伊勢くんとつきあっていいのか、迷いがうまれた。


同じ会社だから、課長だけじゃなくていろんな人の目が気になるっていうのもある。


でもそれ以上に、伊勢くんの優しさに甘えてるだけだっていう自覚があったのかもしれない。


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