20代最後の夜は、あなたと
「100%俺を見てくれたら、次はここな」


伊勢くんはニヤリと笑いながら、私の唇に指先でふれた。


「えっ、いや、その・・・どこ?」


「課長とはもっとスゲーことしてるくせに」


何も言い返せなかった。


「悪い、男のヤキモチなんてカッコわりーよな」


「ヤキモチ妬いてくれるんだ?」


「そりゃ妬くよ、あの霧島課長が相手だからな」


「ふーん」


伊勢くんのちょっとスネた顔が、すごくかわいかった。


「なんだよ」


「べっつにー」


伊勢くんの左手が私の右手にふれて、ヒラリとかわそうとしたけど、ギュッと握られた。


私は、この手をずっと離さないでいようと決めた。


「昼なに食いたい?」


「そうだなあ、やっぱここでしか食べられないものがいいな」


湯布院の駅に戻るまで、ほぼずっと手をつないでいた。


この日から私たちは、つきあい始めたんだ。


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