20代最後の夜は、あなたと
そのあとは、流されるまま伊勢くんに抱かれた。


身体中で感じる伊勢くんの唇に酔いながら、どこかで霧島課長と比べてしまう私がいた。


違う人なんだから、違って当たり前なのに。


脳裏をかすめるのは、霧島課長の顔で。


打ち消そうとギュッと目を閉じるけど、そうすればするほど課長の感触を思い出してしまった。


「紗和、って呼んでいいよな?」


「うん」


「やべぇ、会社でも呼んじゃうかも」


ベッドでまったりしながら交わす会話は、つきあいたてホヤホヤの恋人同士のピロートークってやつだけど。


これでいいんだ、と自分に暗示をかけ続けている私を、俯瞰で見ているもう一人の私が確実にいた。


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