20代最後の夜は、あなたと
しばらく、といっても10日間くらいだったけど、仕事上必要最低限の会話しかしていなかったから、すごく緊張した。


部屋の電気はついていた。


震える指で、部屋番号を呼び出した。


「あの・・・突然」


ごめんね、と言いかけたら、エントランスの自動ドアが開いた。


部屋の前に着いてもう一度インターホンのボタンを押そうとしたら、何も言わずにドアが開いた。


「伊勢くん、ごめんなさい」


怒った顔した伊勢くんは、


「入れよ」


と言って、ドアを支えてくれた。


「怒ってるよね」


「怒ってるよ。


でも、紗和も俺のこと怒ってるだろ?」


「怒ってないよ。


ただ、私が伊勢くんから離れた方がいいのかな、と思った」


「ひでーな、なんでそうなんだよ?」


「え、だって、私が伊勢くんと別れたら、社内の気まずい雰囲気も良くなるし、私が我慢すれば・・・」


伊勢くんは、私をギュッと抱きしめた。


「なんだよ、それ。


俺の気持ちはどうなんの?


紗和のことすげー好きだから、他の女のことなんか興味ねーよ。


紗和は、本気で俺と別れようと思ってんの?」


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